第54章 私に触れる

このシーンの筋は単純だ。二番手女優が三番手女優に辱められ、反撃に転じる――ただ、それだけ。

もともとの台本では、杉浦杏奈が言葉で杉浦美雪を追い詰めるだけのはずだった。

ところが、杉浦美雪はずっと神経を張り詰めさせていた。杉浦杏奈が何か「やらかす」んじゃないかと怯えていたぶん、いざ杏奈が台詞を言い始めると、逆に美雪のほうが役に入れない。

「カット!」

鈴木真彦が苛立った声を飛ばす。

「杉浦美雪、お前の台詞は? 今回は別に怖がらせてねぇだろ。なんでまだ出てこねぇんだよ」

杉浦美雪は悔しそうに唇を噛み、俯いた。

「すみません……この二日、お姉ちゃんと合わせてなくて。ちょっと、感覚が…...

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